石川県の地形・地質
石川県には長い時代を経て形成された様々な地層や岩石が分布されており、ここではその紹介をします。
『北陸地質調査業協会創業30周年記念誌(北陸地質調査業協会)
石川県の地形・地質の概要(著:絈野義夫 金沢大学名誉教授) 』より出典
変成岩・深成岩
片麻岩類(飛騨変成岩類)は、白山北西側にかなり広く露出するほか、大日山西側、邑知低地帯北西側、能登北西部のせまい範囲などに分布する。全般的に堅い岩盤であるが、一部に結晶質石灰岩をはさみ、風化・破砕部では脆弱となっている。
花崗岩類は、宝達山塊に広く露出し、能登北西部にも分布する。節理が発達し、一部は深層風化によってマサ状となっている。
火山性岩石
白山北側地域などに分布する流紋岩質火砕岩(濃飛流紋岩類)は、溶結凝灰岩と角礫凝灰岩からなり、一般に堅硬な岩盤である。
前期中新世(一部漸新世)の安山岩類は、県南部の山地域と能登半島北部に広く露出する安山岩質の角礫凝灰岩を主とし、溶岩を所どころに含むほか、砂岩・泥岩をはさむこともある。特定の破砕部や変質部を除いては、概して堅硬な岩盤である。
前期中新世の流紋岩質火砕岩・溶岩は、医王山以南の加賀地区に広く分布する。細粒の凝灰岩や変質部を除いては、一般に堅固な岩盤である。流紋岩溶岩はとくに堅硬であるガラス質のパーライトを伴うことがある。
能登北東部に分布するデイサイト(石英安山岩)質の火砕岩は、柳田累層とよばれている。その主体をなすものは角礫凝灰岩や軽石凝灰岩であるが、一部に溶結凝灰岩や成層した細粒凝灰岩を含み、砂岩・泥岩のうすい層が数枚はさまれ、ときには玄武岩溶岩がはさまれることもある。
後期中新世(約 800万年前)の火山岩としては、能登剣地付近の黒崎安山岩があり、概して新鮮で、一部は砕石原料として採掘されている。
鮮新世~第四紀の火山噴出物は、大日山、戸室山、白山に分布する。大日火山・経ヶ岳火山は200~300万年前、戸室火山は50万年前に活動したものであり、溶岩と火砕岩からなる。白山火山は、30万年前の加賀室火山にはじまり、10万年前ごろの古白山火山の活動のあと2~3万年前からはじまる新白山火山の活動があって現在に至っている。新白山火山の噴出物の一部は未固結で崩壊をおこしやすい。
中生代の固結堆積岩(手取層群)
白山西側の手取川上流地域に広く分布し、下位から五味島層(礫岩)、桑島層(砂岩・頁岩互層)、砂岩を主体とし礫岩をはさむ赤岩層、砂岩を主とし頁岩をはさむ明谷層、の順に重なっている。断層による破砕部や、温泉による変質部を除いては、一般に堅い硬岩であるが、頁岩部は相対的に軟らかい。また、手取層群の分布範囲には、少なからぬ地すべり地があることにも留意すべきである。
中新世~鮮新世の固結堆積岩
県南部の加賀・山中地区、中部の金沢・津幡地区の丘陵、能登南部の丘陵地一帯、能登北西部、及び能登北東部に広く分布する。岩質からみれば、礫岩を主とするもの、砂岩・泥岩・礫岩からなるもの、砂岩層、及び厚い泥質岩などからなり、一部に石灰質砂岩や石灰質シルト岩がみられる。これらの地層は、地区ごとにちがった名称でよばれており、表1には代表的なものを示してある。これらの堆積岩中には、厚さ数10cmから数10mに及ぶ凝灰岩層がはさまれることがある。
中新世堆積岩の分布範囲のうちで、とくに地すべりの密集多発地区がいくつかある。能登北東部の珠洲北岸地区、能登北西部の輪島・門前・剣地地区、能登南部の鹿島・志雄地区、宝逹山南側の津幡・金沢地区などがそれである。地すべりブロックの発生には、断層による破砕や地層の傾斜などの構造的要因が関与しているが、堆積物の岩質も重要な素因である。概して伝えれば、砂岩・泥岩互層、凝灰岩層、泥岩層が関与する場合が多いが、砂岩層の場合もある。個々の地滑りブロックごとに精細に調査し、過去の地すべり履歴を把握して対応策を考えるべきである。
更新世の堆積岩(堆積物)
前期更新世(150~80万年)の大桑層と、中期更新世前半(70~50万年)の卯辰山層は、半固結堆積岩である。大桑層は主に中粒砂岩層からなる。卯辰山層は、粗粒砂岩・泥岩・礫岩からなり、場所によってそれらの割合が変化する。金沢近郊などで、多くの造成地が大桑層・卯辰山層の分布地につくられている。
中期更新世後半(40~15万年)~後期更新世(15~7万年)、及び更新世末期(7~2万年)の地層は、未固結堆積物からなる。七尾付近の高階層、加賀南部の南郷層などの中期更新世の地層は、未固結の砂・泥・礫層からなる。後期更新世の海成段丘堆積物(平床層、奥原層、片山津層)は、一般に砂層を主とし下部に泥質層を伴う。河成段丘堆積物は2~3段に区別され、レキ層を主体とするものが多い。
沖積層と砂丘
平野部(扇状地を含む)の地下地質については、ボーリング資料にもとづく断面図の参照が必要であり、公刊文献としては、10万分の1「石川県地盤図」(1982)と、「石川県平野部の地盤図集」(建設省、1982)がある。沖積層の上部泥層、とくに河北潟周辺などの潟埋積層は、粘土質の軟弱地盤として注意すべきものである。
海岸砂丘は、5000年前ごろまでに形成された旧砂丘と、2000年前~現在の新砂丘とに分けられる。両者の間には、厚さ数10cmの褐色砂層又は泥炭質層がはさまれる。